自作PCやBTOパソコンのSSDパーツで、
「Crucial(クルーシャル)」というブランドを見かけることがあります。
ではCrucialとはどこの国のメーカーなのか、
Crucial製品にはどういった特徴があるのかなどを詳しく見ていきましょう。
Crucialはアメリカ企業のブランド
Crucialは「マイクロン・テクノロジー」というアメリカ企業の製品ブランドです。
主に自作PCやBTOパソコンの組み込み用、増設用のメモリモジュールやSSDの
ブランドとしてCrucialが使われています。
1978年にエンジニアと弁護士によって半導体製品の設計を行う会社として
設立されたのがマイクロン・テクノロジーです。
アメリカアイダホ州で設立、現在もアイダホ州に本社を置いています。
半導体製品の設計から始まって1981年に半導体製造工場を作り、
1982年にDRAM事業に参入しました。
現在もDRAMはフラッシュメモリやSSDと並んで、
マイクロン・テクノロジーの主要製品となっています。
マイクロン・テクノロジーは半導体メーカーとして世界トップクラスで、
2021年はIntel・Samsung・SKハイニックに次ぐ4位の売上を記録しました。
2022年はQualcommに抜かれて5位に落ちましたが、
世界シェア5%近くを持つトップメーカーです。
日本と関わりが深いマイクロン・テクノロジー
Crucialがアメリカのブランドと聞いて少しガッカリした人も居るかもしれませんが、
実はCrucialのメーカーであるマイクロン・テクノロジーは日本と深い関係があります。
日本にはマイクロン・テクノロジーの子会社が2つ存在しており、
1つが「マイクロンジャパン」、もう1つは「マイクロンメモリジャパン」です。
マイクロンジャパンは、日本の製鉄メーカーである神戸製鋼とアメリカの半導体メーカー
テキサス・インスツルメンツの共同出資によって作られた会社を起源します。
既に日本に進出していたテキサス・インスツルメンツが日本での事業を拡大するため、
1990年に神戸製鋼とともに「KTIセミコンダクター」を設立しました。
兵庫県西脇市に工場を作って日本におけるDRAM事業に参入、
1992年から市場に製品を送り出します。
1998年にKTIセミコンダクターはマイクロン・テクノロジーと資本提携を結び、
1999年に「KTMセミコンダクター」へと商号が変更となります。
2001年にはマイクロン・テクノロジーがKTMセミコンダクターの全株式を買い取り、
「マイクロンジャパン」となったのです。
DRAM事業参入のために作った西脇市の工場は売却されており、
現在マイクロンジャパンはNAND型フラッシュメモリを専門的に作っています。
マイクロンメモリジャパンは、1999年にNECと日立製作所のDRAM事業を統合して
設立された「NEC日立メモリ」が起源です。
「エルピーダメモリ」への商号変更や不祥事、会社更生法適用などの紆余曲折を経て
2012年にマイクロン・テクノロジーに買収されます。
NECからエルピーダ、エルピーダからマイクロンメモリジャパンに引き継がれた
広島県東広島市にある工場でDRAM製造を現在も行っています。
ロジック半導体やメモリ半導体の国内生産を推進する政府の事業を利用して、
2024年には広島工場が大幅に増強される予定です。
マイクロンメモリジャパンは、設立から現在までに130億ドル以上の投資と
1500人以上の雇用創出を日本にもたらしています。
広島工場の増強によって6000億円以上投資額が増え、
2000人以上の雇用創出が見込まれています。
2018年から2022年までの5年間における海外企業の対日直接投資額は
マイクロン・テクノロジーが最大です。
Crucialはアメリカのメーカーブランドですが、一部は日本で作られており、
他の海外メーカーよりも親近感を覚えるのではないでしょうか。
Crucialの製品
マイクロン・テクノロジーは半導体製品の設計から始まって途中パソコンの開発を
行っていた時期もありますが、現在はメモリモジュールとストレージに特化しています。
(参照:https://jp.micron.com/products)
Crucialブランドのメモリモジュールとしては
・DRAM
・DRAMモジュール
・グラフィックスメモリ
・マネージドNAND
・マルチチップ・パッケージ
・NANDフラッシュ
・NORフラッシュ
などを製造・販売しています。
「DRAM」は揮発性メモリであるRAMの一種で、
通電時のみデータの記憶ができる装置です。
パソコンでOSやアプリケーションなどを使う時にはDRAMが作業スペースとなります。
ちなみに電源を切ってもデータを記憶し続けられるのは不揮発性メモリで、
代表的なものがROMやフラッシュメモリです。
複数のDRAMを基盤に取り付けて配線を施し、
外部接続のための端子を付けたものが「DRAMモジュール」となります。
「グラフィックスメモリ」はVRAMとも言われるもので、
画像処理のデータを一時的に保管するメモリです。
SSDやSDカード、USBメモリなどストレージのデータを保存する装置が
「NANDフラッシュ」と「NORフラッシュ」です。
NANDフラッシュとその利用に必要な処理を実行する内蔵コントローラーを
組み合わせたものが「マネージドNAND」となります。
NORフラッシュは読み出し速度は速いものの書き込み速度が遅いので、
容量の大きいストレージにはNANDフラッシュを使うことが多いです。
複数の半導体チップを積層して1つにしたものが「マルチチップ・パッケージ」です。
ハンバーガーのように重ねたものだけを指すこともあれば、複数の半導体チップを
横に並べたものを含めてマルチチップ・パッケージと呼ぶこともあります。
Crucialのストレージ
Crucialブランドで製造・販売されているストレージは
・SDカード
・SSD
の2種類です。
「SDカード」は小さいカード型の記憶装置で、
パソコンはもちろんスマホや家庭用ゲーム機、ドライブレコーダーなどで使われます。
「SSD」は「Solid State Drive」の略で、パソコンなどで使われる記憶装置のことです。
HDDがディスクに磁気を使ってデータを読み書きするのに対して、
SSDはNANDフラッシュなどのメモリチップを使ってデータを読み書きします。
SSDは衝撃による影響を受けにくいので、
持ち運んで使うことを前提とするモバイルパソコンのストレージとして優れています。
読み書きの速度がHDDよりも速く、
それでいて作動時の音が静かなのもSSDのメリットです。
ただ容量が小さく単価が高いので、
現状では動画や画像などの大容量のデータはHDDに保存するのが一般的です。
Crucial製品の特徴
ネットの口コミなどでCrucialのDRAMやDRAMモジュールについての評判を
調べると「非常に堅実」という意見が多く見られました。
マイクロン・テクノロジーは自社で一からDRAMを作っていることもあって、
供給量が安定しており、入手しにくい状況になることがあまりありません。
様々な社会的事情で2020年からの2~3年は半導体製品の供給が不安定になり、
DRAMが入手しにくくなったり価格が上昇したりといったことがありました。
しかしCrucialのDRAMやDRAMモジュールは供給量も価格も安定していたので、
厳しい状況の中でコアなユーザーに高い支持を受けたのです。
読み書きの速度が特段速いなどの派手さは無いものの動作も堅実で故障が少なく、
ゲーミングメモリは永久保証である点も高く評価されています。
CrucialのSSDの特徴
DRAMと並ぶもう1つのCrucialの主力製品がSSDですが、
CrucialのSSDは「とにかく頑丈」という特徴を持っています。
そもそもSSDはHDDに比べて頑丈なものの、
CrucialのSSDは他メーカーのSSDと比べても頑丈です。
よほど手荒に扱わない限りは物理的に壊れる心配はほとんど無く、
保存したデータも少々のことでは消えたり壊れたりしません。
コアなユーザーの間では「大事なデータを守りたいならCrucialを使え」と
言われるぐらい頑丈さにおいては群を抜いているのです。
SSDの性能自体はそれほど高くない
CrucialのSSDは頑丈さに定評はあるものの、
SSDとしての性能はそれほど高い評価は受けていません。
データの読み書き速度は実用に問題ないレベルではあるものの、
他メーカーのSSDに比べると遅めとなっています。
読み込み速度も書き込み速度も公表値と実測値の差が他メーカーよりも大きく、
実際に使って「思ったより遅い」と感じている人も少なくありません。
「頑丈さならCrucial、読み書きの速さなら他メーカー」と言われており、
読み書き速度を重視するならCrucialは選択肢から外れる可能性が高いです。
価格は標準的
CrucialのSSDの価格は他メーカーと比べても標準的です。
例えば容量の小さい256GBのSSDの相場は3,000円前後で、
Crucialの256GBのSSDは2,980円となっています。
容量1TBのSSDはCrucialだと最安で7,280円、性能を気にしなければ
4,000~5,000円台でも買えますが1TBで7,000円台は標準的です。
4TBとなると外付けは最安で18,000円台、
他メーカーの2TB外付けは20,000円を超えますから安めと言えます。
ただ内蔵SSDは最安でも90,000円台となっており、
性能を気にしなければ20,000円台でも考えることを考えると少し高いです。
まとめ
Crucialは、マイクロン・テクノロジーというアメリカ企業のパソコンのメモリや
ストレージのブランドです。
日本にも工場があって一部Crucial製品は日本でつくられていますから、
メモリやストレージの購入を検討しているならCrucialを選択肢に加えてみてください。