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HPのパソコンが壊れやすいっていつの話をしているの?

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世界的パソコンブランドで、パソコンショップなどの店頭でもよく見かける「HP」ですが、
一部では「HPのパソコンは壊れやすい」と言われています。

ではHPのパソコンは本当に壊れやすいのか、
壊れやすいと言われる原因は何なのかなどを詳しく見ていきましょう。

     
   

HPのパソコンは本当に壊れやすい?

一般的に特定ブランドの製品のネガティブな情報は一部で言われているだけで、
実際は言われているほど酷くないことが多いです。

HPのパソコンも壊れやすいと言っているのは一部のユーザーで、
反対に故障せずに長く使えていると言うユーザーも多いと思われます。

ただHPのパソコンについては、
一部のユーザーが壊れやすいと言っているだけではない客観的な根拠もあります。

アメリカのSquareTradeという会社の調査で、
大手メーカーの中でHPのパソコンが一番故障率が高いという結果が出ています。
(参照:https://www.squaretrade.com/htm/pdf/SquareTrade_laptop_reliability_1109.pdf#search='SquareTrade_laptop_reliability_1109')

ちなみにSquareTradeは、売り手と買い手の間の紛争を解決するサービスや
電子機器の保証サービスを行っている会社です。
(参照:https://www.squaretrade.co.jp/)

購入から3年以内のパソコンの故障率を3万台以上を対象に調査したもので、
ユーザー起因でない機械的な故障は全体の約20%で発生しています。

メーカー別の故障率では、HPは2年以内で15%強、3年以内で約25%となっています。

HP以外の主要メーカーの3年以内の故障率は以下の通りです。
 ・Lenovo 約21%
 ・DELL 約18%
 ・Apple 約17%
 ・ASUS 約15%
 ・Acer 約23%

LenovoやAcerも3年以内の故障率が20%を超えていますが、
HPの25%には届きません。

SquareTradeの調査結果をそのまま信じるのであれば、
主要メーカーの中ではHPのパソコンが一番壊れやすいことになるのです。

SquareTradeの調査は2009年に行われたもの

SquareTradeの調査結果を信じるならHPのパソコンは壊れやすいことになりますが、
この調査結果は正直なところあまり信憑性が高くありません。

SquareTradeや調査の仕方、集計方法などに問題があるのではなく、
この調査が2009年に行われたものだからです。

実際の調査結果には主要メーカーとして「東芝」と「ソニー」の名前が入っています。

東芝もソニーも2023年現在は既にパソコン事業から撤退しており、
それぞれDynabook株式会社、VAIO株式会社に事業が引き継がれています。

パソコンを含む電子機器の技術はこの10年で飛躍的に進歩していますから、
10年以上前の調査結果をそのまま鵜呑みにはできません。

同じ調査を2023年に行えば違う結果が出る可能性も大いにありますし、
2009年の調査結果だけでHPのパソコンが壊れやすいとは言えないのです。

HPのパソコンは壊れにくい根拠

SquareTradeの調査結果が壊れやすい根拠だとすれば、
HPのパソコンが壊れにくいことを示す客観的根拠もあります。

その客観的根拠がHPパソコンが「MIL規格」をクリアしていることです。

全てのではありませんが、HPパソコンの一部モデルは「MIL規格」をクリアしています。
(参照:https://jp.ext.hp.com/directplus/keyword/mil/)

MIL規格はアメリカ国防省が制定したもので、
日用品から武装品に至るまでアメリカ軍が物資を調達する際の基準となるものです。

HPパソコンの一部モデルは
 ・衝撃(梱包した状態で高さ122cmから落とす)
 ・粉塵(稼働時に一定時間細かい粉塵を吹き付ける)
 ・低圧(高度4572m相当まで減圧)
 ・高温(30~60度)
 ・低温(マイナス20度)
 ・温度変化(マイナス20度から60度)
 ・振動(前後、上下、左右それぞれ1時間の振動を加える)
 ・太陽光反射(太陽光を模した光を24時間×3照射)
などのテストをクリアして「MIL-STD-810G」という規格に適合しています。

普通の環境で使っていれば外的要因で故障する可能性はほとんどないわけですから、
HPのパソコンが壊れにくい客観的根拠となるわけです。

ただし上記の条件下でもパソコンが稼働するというだけのことで、
100%故障しないことを示す規格ではありません。

また他メーカーのパソコンにもMIL規格をクリアしたものがあるので、
HPが他メーカーよりも故障しにくい根拠にもならないです。

「東京生産だから壊れにくい」は間違い?

HPのパソコンが壊れにくいのは「東京生産だから」だと言われることがあります。

実際にHPのパソコンが日本で作られていると聞いたことがあるでしょうし、
パソコンに「東京生産」のステッカーが貼られているのを見たこともあるかもしれません。

確かに、古くは東京都の昭島市やあきる野市、現在は日野市に
HPのパソコン生産工場があり、日本でもHPのパソコンが作られています。
(参照:https://jp.ext.hp.com/campaign/personal/others/made_in_tokyo/)

ただし東京の工場で作られているのは法人向けの一部モデルのみで、
個人向けモデルはほぼ全量が中国で作られています。

企業や自治体で導入されているHPパソコンは東京生産の可能性がありますが、
個人で購入するHPパソコンが東京生産である可能性はほとんどありません。

「HPのパソコンは東京生産だから壊れにくい」は間違いではないものの
正確ではないのです。

詳しくは後述しますが、HPの個人向けパソコンが中国で作られていることが
壊れやすいことにも繋がりません。

HPのパソコンが壊れやすいと言われる理由

ネットなどでHPのパソコンが壊れやすいと言われる理由としては、
「かつては壊れやすかったから」ということが挙げられます。

先に紹介しましたが、SquareTradeが2009年に行った調査で実際に
他メーカーに比べて3年以内の故障率が高いという結果が出ています。

10年以上前はHPのパソコンは壊れやすかったので、
現在もHPのパソコンは壊れやすいというイメージを持ってしまっているわけです。

他メーカーと同等程度の確率で故障する恐れはあるものの、
他メーカーと比べて格段に故障率が高いといったことは無いと思われます。

中国製だから壊れやすい?

HPのパソコンが壊れやすいと言われる理由として1つ考えられるのが、
HPのパソコンが中国製であることです。

HPはアメリカの会社ですが、
日本を含めた東アジア向けの製品の大半は中国の事業者に生産を委託しています。

要するに、日本でHPのパソコンを購入すると中国製のものが手元に届く可能性が
高いということです。

日本には中国で作られた製品に対して「安かろう悪かろう」のイメージが
根強く残っています。

安かろう悪かろうのイメージから、
中国で作られているHPのパソコンは壊れやすいと思われているということです。

かつては中国で作られたものは安いけど品質が良くなかったですし、
現在も一部の製品は安かろう悪かろうのイメージそのままです。

しかしパソコンを始めとした電子機器に関しては、
中国製は安かろう悪かろうではなく「安くて良い物」となっています。

現在の中国には世界中の電子機器メーカーの工場があり、
ほとんどの電機メーカーは日本向けの製品を中国で作っているのです。

中国における電子機器製造の技術は格段に進歩していて、なおかつ研究・開発から
部品調達、製造、最終チェックまで一貫して行えるのでコストが抑えられます。

高い製造技術を持ちながらコストが抑えられるので、
中国製パソコンは高品質ながら価格が安くなっているわけです。

中国製パソコンは今や高コスパの代名詞ですから、
中国製であることをHPのパソコンは壊れやすい根拠にするのは間違いです。

パソコンの生産技術が低い

HPのパソコンが壊れやすいと言われるのは、
一部で「HPはパソコンの生産技術が低い」とされていることにも原因があります。

CPUやメモリ、ストレージなどのスペックは他メーカーと同じだが、
生産技術が低いからHPのパソコンは壊れやすいというわけです。

詳しく調べてみましたが、
HPの生産技術が低いという噂がどこから出てきたものかよく分かりませんでした。

HPはアメリカの「シリコンバレーの始まり」と言われる会社で、
世界的に見ても電機メーカーとしては老舗中の老舗です。

2022年時点でもパソコンの世界シェアでトップ3に入っており、
世界のトップメーカーの生産技術が低いとは到底考えられません。

恐らくHPのパソコンが中国製であることが「生産技術が低い」に繋がったのだと
思いますが、それも的外れです。

今や中国はパソコンの一大生産地で、世界の最先端技術が集まっている、
それでいてトップメーカーであるHPの生産技術が低いことは考えにくいのです。

使っている部品の質が悪い

HPのパソコンが壊れやすい理由として、
「使っている部品の質が悪い」ことが挙げられることがあります。

部品の質が悪いという噂の出所も不明ですが、
これも恐らく中国で作られていることが関係していると推察されます。

中国で粗悪な部品を使って作ったパソコンを安く販売しているから壊れやすい、
という理屈です。

半導体も中国で作っていますから、
パソコンを作るのに必要な部品はほとんど中国国内で賄えます。

HPが中国製の粗悪な部品を使っているとすると、
他のパソコンメーカーも粗悪な部品を使っていることになってしまうのです。

HPのパソコンが安いのは、
 ・比較的人件費の安い中国で生産している
 ・研究、開発から部品調達、製造、最終チェックまで中国でできる
 ・プリインストールソフトを極力減らしている
 ・サポートを多少犠牲にしている
などが主な理由です。

あくまで製造や販売にかかるコストを下げることで低価格に繋げているだけで、
パソコン自体の品質が悪いわけではありません。

     
   

まとめ

一部でHPのパソコンは壊れやすいと言われますが、
この噂を裏付ける明確な根拠は見つかりませんでした。

かつては壊れやすいこともあったようですが、現在も壊れやすいのであれば
HPが世界シェアトップ3に入り続けていることの説明がつきません。

初期不良の製品に当たってしまう恐れはあるものの、それは他メーカーでも
同じことですから必要以上にHPのパソコンを敬遠しなくても大丈夫です。

   
   

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