パソコンの世界的トップメーカーで日本でもユーザーの多い「HP」、
一部で「壊れやすい」と言われています。
安い買い物でないだけに壊れやすいパソコンは選びたくありませんが、
HPのパソコンは本当に壊れやすいのでしょうか?
「HPのパソコンは壊れやすい」という意見が多いのは事実
実際に壊れやすいかどうかは別として、
ネットなどで「HPのパソコンは壊れやすい」という意見が多く見られるのは事実です。
比較サイトなどのレビューでも
・購入から1年足らずで3回修理
・数年で使えなくなった
・初期不良が多い
などの意見が見られます。
Googleなどの検索サイトで「HP」を検索しようとすると、第二ワードとして
「壊れやすい」が候補に挙がるので壊れやすいと感じている人が多いと思われます。
ただHPは世界でも日本でもパソコンシェアがLenovoに次ぐ2位であり、
HPのパソコンを使っている人がたくさん居るのです。
使っている人が多いと故障率は低くても故障するパソコンの絶対数は多くなりますから、
必然的に「HPのパソコンは壊れやすい」という意見が多くなってしまうのです。
またHPのパソコンを購入して普通に使えている人は特に情報を発信しませんが、
不具合が発生した人はSNSなどで情報を発信します。
壊れたという人の情報しか目にしないので、HPユーザー以外の人も
「HPのパソコンは壊れやすい」という印象を抱いてしまいやすいわけです。
HPのパソコンは以前は壊れやすかった
HPのパソコンが壊れやすいと言われる大きな理由として、
以前は実際に壊れやすいかったことが挙げられます。
アメリカの「SquareTrade」という会社が、3万台以上のノートパソコンを調査したところ
HPの故障率が一番高いという結果が出ました。
(参照:https://www.squaretrade.com/htm/pdf/SquareTrade_laptop_reliability_1109.pdf#search='SquareTrade_laptop_reliability_1109'
ちなみにSquareTradeはスマホなど電子機器の保証サービスを提供する会社で、
日本法人によって日本でもサービスを提供しています。
(参照:https://www.squaretrade.co.jp/)
HPのパソコンの2年以内の故障率が15%超、3年以内の故障率が25%超で、
実に4台に1台が3年以内に故障するという結果になっています。
SquareTradeの調査で一番故障率が低かったのは「ASUS」で、
2年以内の故障率が10%足らず、3年以内は15%超でした。
3年以内の故障率がASUSと10%も違うわけですから、
HPのパソコンは実際に壊れやすかったのです。
ただしSquareTradeの調査は2009年に行われたもので最新のものではありませんから、
現在のHPのパソコンが壊れやすいことの根拠にはなりません。
HPのパソコンは物理的に壊れやすい面がある
一般的に「パソコンが壊れる」と言うと、電源が入らなくなったり
挙動がおかしくなったりなどシステム的な故障を指すケースが多いです。
HPのパソコンでシステム的な故障はイメージほど多く発生していませんが、
物理的な故障が発生しているケースは結構あります。
代表的なのがノートパソコンのヒンジ、モニター部分と本体部分の繋ぎ目で
開閉する際に支点となる部分が壊れやすいと言われています。
HPのパソコンは比較的リーズナブルなため、
製造コストを抑えるのに外装部分に質の落ちる部品が使われることがあるのです。
ただHP以外にもリーズナブルな価格でパソコンを販売しているメーカーはあり、
同様に外装部品の質が落ちるケースは少なくありません。
比較的安価なモデルで物理的な故障が発生するのはHPに限ったことではなく、
物理的な故障が発生するからHPは壊れやすいというのも正確ではないです。
HPのパソコンは壊れやすくない
一般的にHPのパソコンには壊れやすいイメージがありますが、
実際に壊れやすいわけではありません。
HPのパソコンが壊れやすくない根拠として、
「MIL規格」に適合したモデルがあることが挙げられます。
(参照:https://jp.ext.hp.com/directplus/keyword/mil/)
MIL規格は米軍調達基準のことで、
過酷な環境下でも問題なく使用できるようにアメリカ国防省が定めた規格です。
全てのモデルではないものの、HPの一部モデルは
・衝撃
・粉塵
・低圧
・高温、低温
・温度変化
・湿度
・振動
などの厳しい基準をクリアしています。
「衝撃」はパソコンを梱包した状態で一定程度の高さからあらゆる角度で落とす、
「粉塵」は細かい粉塵をパソコンに数時間吹き付けます。
「低圧」は高度4000m超を想定した気圧の中、「高温、低温」は30~60度、
マイナス20度の中でも正常に作動するかのテストです。
「温度変化」はマイナス20度から60度を何度も繰り返し、
「湿度」は湿度95%の状況下でも作動するか確認します。
「振動」は車や鉄道での輸送を想定して、
前後・上下・左右の三方向の振動を一定時間与え続けるテストです。
これらの厳しい環境下でも正常に作動することが確認されているわけですから、
HPのパソコンは壊れやすいわけがないのです。
少なくともMIL規格に適合したモデルを購入すれば、
余程乱暴に扱わない限りは2~3年で使えなくなる心配はありません。
HPのパソコンの故障率はそれほど高くない
2009年のSquareTradeの調査ではHPのパソコンは故障率が高いとされましたが、
現在はそれほど故障率が高くありません。
日本のパソコン修理業者「パソコン修理本舗」の
2022年度メーカー別修理受付割合では、全体の6位となっています。
(参照:https://pc99-honpo.com/repair-acceptances-by-maker-2022)
日本におけるパソコンの販売台数ではLenovoに次ぐ2位ですが、
修理受付では販売台数の少ないDELLやAppleよりも下の順位なのです。
Lenovoのように販売台数が多いと修理受付件数も多くなるのが通常ですから、
販売台数に対して修理受付が少ないHPは故障率が高くないと言えるわけです。
メーカーとしての信用度は高くもないが低くもない
RESCUECOMという会社の2020年の調査では、
HPのメーカーとしての信用度は高くはないものの低くもないという結果が出ています。
ちなみにRESCUECOMは、
アメリカでコンピューターの修理やサポートなどのサービスを提供している会社です。
(参照:https://www.rescuecom.com/)
RESCUECOMの調査では、耐衝撃性の低さが指摘されて「検討する価値のある
ブランド」にランクされています。
(参照:https://www.prnewswire.com/news-releases/2020-rescuecom-computer-reliability-report-301068125.html)
全体の順位としては5位で、
LenovoやAppleには負けているもののDell・ASUS・Acerには勝っています。
HPのパソコンの耐久性に対する誤解
HPのパソコンの耐久性に関して一般的に誤解されている点がいくつかあり、
その1つが「中国製だから壊れやすい」というものです。
HPはアメリカの企業ですが、
日本など東アジア向けの製品は主に中国の工場で作っています。
かつて中国製品に粗悪なものが多かったことから、
日本には「Made in China」に対するネガティブなイメージが根強く残っています。
しかしパソコンを含めた電子機器製造に関して中国は先進国であり、
性能だけなら「Made in Japan」より上と言っても良いぐらいなのです。
現在の中国は「世界の工場」とも言われていて、
HPだけでなくDellやAppleなど世界中の電子機器メーカーの工場があります。
中国の工場では世界最先端の技術を使った機器が作られているので、
HPのパソコンが中国製だから壊れやすいことにはならないのです。
むしろパソコンで中国製を除外することは、
大幅に選択肢を狭めて自分に合ったパソコンを見つけにくくするだけの行為です。
HPのパソコンは価格が安いから壊れやすい
HPのパソコンは比較的リーズナブルなものが多いことから、
「部品の質を落として安く販売しているので壊れやすい」と言われることがあります。
確かにパソコンの外装部分には質を落とした部品が使われていることもありますが、
システムを司る部分の部品には高品質なものが使われています。
HPのパソコンがリーズナブルなのは、
部品の質を落としているからではなくて中国で作っているからです。
中国ではパソコンの研究・開発から部品調達、製造、最終チェックまで一貫して
国内でできるようになっています。
海外から技術者を招いたり部品を輸入する必要が無いので、
製造コストが抑えられてリーズナブル価格で提供できるというわけです。
HPは東京生産だから壊れにくい
HPのパソコンが壊れやすいという意見に対する反論として、
「東京生産だから壊れにくい」という意見があります。
確かにHPは過去に東京都昭島市やあきる野市に現在は日野市に工場を持っており、
20年に渡って東京でパソコンを生産しています。
(参照:https://jp.ext.hp.com/campaign/personal/others/made_in_tokyo/)
日本人の「Made in Japan」に対する誇りと信頼は絶大で、東京生産である
HPのパソコンは壊れにくいに違いないと一部で思われているわけです。
ただHPがパソコンを東京で作っているのは事実なのですが、
東京で作っているのは法人向けモデルの一部のみです。
プライベート用や仕事用として個人で購入する個人向けモデルは東京で作っておらず、
中国で作られています。
「東京生産だから壊れにくい」という言い分が正しいとしても、
それは法人向けモデルの話で個人向けモデルには当てはまらないことなのです。
富士通やNEC、東芝、ソニーなど国内の大手電機メーカーが、
すでにパソコン事業から撤退しています。
大手メーカーが撤退したことでパソコンの国内生産体制は縮小してしまっており、
必ずしも国内生産だから質の高いパソコンが作れるとは限りません。
パソコンは通信機器だけにセキュリティリスクも気になりますが、
耐久性に関してのみで言うと日本製よりも中国製の方が上と言えないこともないのです。
まとめ
HPのパソコンが壊れやすいと一部で言われているものの、
HPのパソコンが壊れやすいことを示す客観的な根拠はありません。
以前は壊れやすいこともありましたが、現在は耐久性は向上していて
他メーカーと比較して極端に壊れやすいといったことはなくなっています。