エアコンを見に家電量販店に行くと、「ビーバーエアコン」と「霧ヶ峰」という
同じ三菱のエアコンが売っていて違いがよく分からないといったことがあります。
では同じ三菱なのにビーバーエアコンと霧ヶ峰という2つのブランドがあるのか、
何が違うのかなどを詳しく見ていきましょう。
ビーバーエアコンと霧ヶ峰はメーカーが違う
ビーバーエアコンと霧ヶ峰は「メーカー」が違います。
「メーカーが違うって?どっちも三菱じゃん!」と思っている人も多いかもしれません。
確かにどちらも三菱なのは間違いないのですが、
ビーバーエアコンを作っているのは「三菱重工サーマルシステムズ」という会社です。
対して霧ヶ峰を作っているのは「三菱電機」です。
三菱重工サーマルシステムズは三菱重工の子会社で、
三菱重工は三菱グループの御三家の1つであり、日本三大重工業の一角でもあります。
ちなみに三菱グループの御三家は「三菱重工」「三菱UFJ銀行」「三菱商事」、
日本三大重工業は「三菱重工」「川崎重工」「IHI」です。
巨大な三菱グループの中核を成しているのが三菱重工で、船舶や航空機、産業機器、
エネルギー関連機器などを主に作っています。
また戦前から軍需産業も担っており、現在も宇宙開発用のロケットや
自衛隊に供給する防衛装備品も三菱重工が作っています。
残念ながら頓挫してしまいましたが、
国産初のジェット機の開発を行っていたのも三菱重工です。
船舶や航空機など大型機器を作れる技術力を三菱重工は有しており、
その高い技術力を生かして作られたのがビーバーエアコンなのです。
三菱電機は三菱重工と同様に三菱グループの中核企業の1つであり、
日本でも指折りの総合電機メーカーでもあります。
電機メーカーとしての売上高は日立製作所に次ぐ国内2位です。
エアコンや冷蔵庫、洗濯機といった家庭用の電化製品だけでなく、
工場のオートメーションシステムやエレベーターなどの産業機器も作っています。
人工衛星の開発も手掛けており、三菱重工が作ったロケットで三菱電機が作った
人工衛星を打ち上げるといったことも行われています。
また三菱電機は世界トップレベルの暗号化技術を持っていて、
三菱電機が開発した「MISTY1」は国際標準暗号として採用されているのです。
元々は同じ会社だった?
三菱電機は三菱重工の一部門を独立・分社化したもので、元々は同じ会社でした。
NHK大河ドラマのモデルにもなった「岩崎弥太郎」が、1884年に当時の日本政府から
長崎造船所を借り受けたことが三菱グループの始まりです。
1887年に借り受けていた全ての施設を買い受け、
1893年に三菱グループの全身である「三菱合資会社」を設立します。
1917年に「三菱造船」を設立して三菱合資会社から独立します。
経営の多角化に伴って、兵庫県神戸市にあった三菱造船(現三菱重工神戸造船所)の
電気製作所を「三菱電機」として分社化して独立させたのです。
ちなみに1934年に三菱造船と三菱航空機が合併して「三菱重工」となり、
戦後の1950年に再度3社に分割されます。
1つは東日本重工(後の三菱日本重工)、1つは中日本重工(後の三菱重工)、
もう1つは西日本重工(後の三菱造船)です。
1964年に分割された3社が再度統合して現在の三菱重工となります。
現在は同じ三菱グループの別会社となっていますが、
三菱電機は三菱重工から独立したので元々は同じ会社だったのです。
分割統合を繰り返した結果、経営が非効率になった?
三菱電機は三菱重工から独立、現在の三菱重工は戦前に造船と航空機が合併、
戦後に3社に分割して再度統合することで現在の形となりました。
戦後の分割は三菱グループの本意ではありませんが、分割や統合を繰り返したことで
かえって経営が非効率となってしまっている面があります。
代表的なのがビーバーエアコンと霧ヶ峰で、
三菱重工と三菱電機でエアコン事業が重複してしまっているのです。
LED電球についても三菱電機と三菱ケミカルで重複していますし、
エアコンやLED電球はグループ企業同士でシェアを喰い合ってしまっています。
同じ三菱エアコンでビーバーエアコンと霧ヶ峰の2ブランドがあるのは、
分社や統合を繰り返した複雑が事情があったからです。
ビーバーエアコンと霧ヶ峰は作っている工場も違う
メーカーが違うので当然ですが、
ビーバーエアコンと霧ヶ峰では作っている工場も違います。
ビーバーエアコンを作っているのは
・大和工場(神奈川県)
・埼玉工場(埼玉県)
・枇杷島製造部(愛知県)
の3か所です
タイや中国には現地のメーカーとの合弁会社を持っており、
現地の家庭用や業務用のエアコンを製造・販売しているのです。
日本向け家庭用のビーバーエアコンは上記3か所を中心に作られていますが、
一部タイで作られた製品も日本で販売されています。
業務用は日本の工場に加えて、中国とタイで作られたものが販売されています。
霧ヶ峰が作られているのは、
日本向けは静岡県にある三菱電機の工場、海外向けはトルコの工場です。
霧ヶ峰は日本向けと海外向けで工場が分かれているので、
日本で販売されている霧ヶ峰は静岡県の工場で作られたものです。
機能の違い
ビーバーエアコンと霧ヶ峰では搭載されている機能も違います。
ビーバーエアコンには
・人感センサー
・サーマルセンサー
という2つのセンサーが付いています。
人感センサーで部屋の中に居る人の動きを感知し、
サーマルセンサーで部屋の温度を感知して自動で室温をコントロールしてくれるのです。
サーマルセンサーは壁・床・窓を見分けられるようになっているので、
温度が違う窓に向かって集中的に風を送るといったような無駄なことはしません。
霧ヶ峰に搭載されているのは「ムーブアイ」というセンサーです。
ムーブアイは、
回転しながら部屋の中に居る人の動きや天井と床との温度差を感知します。
人の居るところに集中的に風を送り、天井と床の温度差から冷房が効きすぎて寒いとか
暖房が効きすぎて暑いと感じないようにしてくれるのです。
動きだけでなく人数も感知するので、
一人だけでなく部屋の中に居る人全員に風が当たるようにします。
ビーバーエアコンの人感センサーとサーマルセンサーの機能を併せ持ったのが
霧ヶ峰のムーブアイといった感じです。
ビーバーエアコンのJET運転
ビーバーエアコンには「JET運転」という機能が備わっており、
これは霧ヶ峰には無い機能です。
三菱重工が航空機などのジェットエンジンを作る際の技術をエアコンに応用したもので、
広い部屋でも部屋の隅々まで素早く風を行き渡らせます。
ファンや熱交換器の配置、吹き出し口の形状や向きを最適化、
少ない電力で強い風量が出せるようになっているのです。
冷房時には天井から冷気が降り注ぐように、
暖房時は暖気が舞い上がらないように風を送ります。
ネットの口コミでは「霧ヶ峰は立ち上がりが遅い」といった意見を目にすることもあり、
立ち上がりはビーバーエアコンの方が早いのではないでしょうか。
省エネ性能の違い
最近は日本でも気候の良い時期が短くなってエアコンの稼働時間が増えており、
エアコン使用による電気代増加も気になるところです。
ビーバーエアコンと霧ヶ峰の省エネ性能を比較すると、
小さい部屋用はビーバーエアコン、大きい部屋用は霧ヶ峰が上となります。
エアコンの省エネ性能は消費電力1kWhでどの程度効果が出るかを示す「APF」という
数値で表され、APFの数値が大きいほど省エネ性能が高くなるのです。
例えばビーバーエアコンのSシリーズのAPFは
・6畳用 7.2
・8畳用 7.0
・10畳用 7.0
・12畳用 6.6
となっています。
(参照:https://www.mhi.com/jp/news/23032301.html)
対して霧ヶ峰のZシリーズのAPFは
・6畳用 7.0
・8畳用 6.8
・10畳用 6.9
・12畳用 6.6
で、12畳用までのクラスはビーバーエアコンが省エネ性能はわずかに上です。
(参照:https://www.mitsubishielectric.co.jp/home/kirigamine/product/2023_z/)
14畳用以上のAPFはビーバーエアコンSシリーズは
・14畳用 7.0
・18畳用 6.3
・20畳用 6.0
・23畳用 5.6
・26畳用 5.4
となっています。
霧ヶ峰Zシリーズは
・14畳用 6.9
・18畳用 6.3
・20畳用 6.1
・23畳用 5.9
・26畳用 5.7
で、わずかですがビーバーエアコンを上回ります。
霧ヶ峰の上位モデルFZシリーズだと
・14畳用 7.4
・18畳用 6.6
・20畳用 6.5
・23畳用 6.1
・26畳用 5.8
とさらに省エネ性能が上がるので、大きい部屋用は霧ヶ峰の方が電気代が安いです。
(参照:https://www.mitsubishielectric.co.jp/home/kirigamine/special/kirigamine-quality/saving/)
価格の違い
エアコンの購入価格で比較すると、霧ヶ峰の方がやや安いです。
価格比較サイトによると、霧ヶ峰のサイズごとの最安値は
・6畳用 38,800円
・8畳用 45,000円
・10畳用 54,800円
・12畳用 63,600円
・14畳用 74,800円
・18畳用 91,600円
・20畳用 122,000円
となっています。
ビーバーエアコンは
・6畳用 40,800円
・8畳用 49,800円
・10畳用 57,800円
・12畳用 64,800円
・14畳用 78,000円
・18畳用 89,800円
・20畳用 179,800円
で、18畳用以外は霧ヶ峰よりも高いです。
機種で搭載されている機能も価格も違い、
同じサイズでも選ぶ機種によっては霧ヶ峰の方が高くなることもあります。
しかし同程度のクラスであれば、霧ヶ峰の方が安く買える可能性が高いです。
まとめ
ビーバーエアコンと霧ヶ峰の違いを詳しく見てきましたが、
同じ三菱ではあるものの別会社の製品です。
ビーバーエアコンは三菱重工の高い技術力が使われており、
霧ヶ峰を含む他メーカーのエアコンには無い機能を備えています。
霧ヶ峰は総合家電メーカーである三菱電機の技術が詰まっていて、
省エネ性能など総合力の高さは他メーカーのエアコンに引けを取りません。
それぞれに特徴があってどちらが上とは一概に言えませんから、
家電量販店の店員さんのアドバイスなどを参考にして購入を検討してください。